初観戦記

結構前になるが、サムライCHで興味深い番組が放送された。その番組とは「永田裕志☆臥薪嘗胆」。タイトルの由来はよく分からないがきっと、2001年の猪木祭りでミルコ戦で秒殺された後リング上で薄笑いを浮かべていたのか、数日後の秋山戦で負けた後何故か号泣していた事に由来しているのだろうか?また、秒殺したミルコ選手に「私のハイキックを1000回見直しても彼には一生分からないだろう」と散々言われた事なのか?結論としてはよく分からないのだが、まぁ彼の姿には「臥薪嘗胆」という言葉が似合うのだろう。
 あいにく、録画に失敗してしまい、最初に見た試合は永田選手と伊原ジムの伊原会長との対談。一方的に熱く喋る伊原会長に対して、「はい」「はい」と軽い返事の永田選手。「時間をとってやればPRIDE戦士にも勝てる」「準備期間が無いのに行く勇気は凄いよ!」と大絶賛。にもかかわらず、「はい」「はい」と軽い返事。さすが、永田選手。力の抜き所を分かっている。だが、更に「永田君の試合は激しいよな」「でも、もっとバッチンバッチンいける」「激しい中にも優しさが出ている」と伊原会長の大絶賛は続く。とにかく、永田選手の困惑の表情と伊原会長のナガタマニアぶりを見せ付けられた試合であった。 
 第二試合はウィラポン選手との通訳を通しての対談。場所は、バンコク。同行者は、「キックの星」司会者大江さんと後藤洋選手。そして、唐突に流れるステレオフォニックス。何故、ウィラポン選手との対談なのか?共通項は『絶対王者』だそうだ。どっかで聞いた言葉であるが、それには関係なく番組は進行していく。IWGP王座を10回防衛した永田選手と14回王座を死守したウィラポン選手。ちなみに、ウィラポン選手は永田選手との対談後に王座陥落している。見てる感じだと、対談と言うよりはウィラポン選手への質問コーナーという印象。絶対王者、そして同い年同士の弾まない対談は続く。どうした?ゆうたん。試合を転がせてないぞ。練習方法、気の持ち方、と箸にも棒にもひっかからないつまらない話が続くが、そこはキラー永田。「財を築きながら練習に打ち込めるのは何故か?」と現役選手とは思えない物騒な質問。しかし、そこは冷静な王者。「練習は仕事なんだ。ボクシングは仕事なんだ」とハングリーなお答え。それに対して「ハングリーですよね、そこに魅かれます」と微妙な笑顔で言う永田選手。何か軽い。どっちかというと、ウィラポン選手の臥薪嘗胆ぶりが印象的な試合であった。
 バンコクのジムで知り合った日本人選手がムエタイの試合をするというので、観戦。永田選手の目がやっとイキイキしている。もしかして、スロースターターなのか?気になったのは付き人の後藤洋選手の目が死んでいた事。トップと新人の差はこういうとこで出るのだろう。やっぱり財があってもハングリーじゃないと。日本人選手が勝利したので、激励しに行く永田選手。「熱いものをもらったので今度は日本のお客さんに僕があげないと」と熱く語るゆうたん。さっきまでの覇気の無さが嘘のようだ。そんなゆうたんの一喜一憂につられる自分がいる。ここへ来てナガタという一個の宇宙に迷い込んでシマッタ。
ところが、ここで急に第一試合のプレイバックが。しかも、ゆうたんが饒舌。本当の姿はどっちなんだ?話の流れを前後逆にするというタランティーノ的な演出にクラクラ。だが、伊原会長のナガタマニアぶりは変わらず。ゆうたんの食べっぷりにも魅かれているほどのナガタマニアという事が発覚。「10年も一緒にいると家族みたいだよ」「永田君がいれば新日本プロレスは永遠に不滅だよ」と伊原会長に押されて結局逆転負け。
 第三試合は、日本に戻って大江さんとともに秘密特訓。練習でもあの「べェーイ」が聞こえる。ムエタイとプロレスの融合技の開発に熱心だ。何度も繰り返される技。そして、ボロボロになっている実験台もといスパーリングパートナーの山本尚史選手の姿が。締めは、大江さんとミット打ち。そして、特訓終了。その後、リングの上で談笑。そして、大江さんが衝撃の一言。「永田さんに教えたムエタイの技『タイナー』は、10年前禁じ手になった技です」永田さんもまんざらではないご様子。これで、新日本内では無敵だ。やったぜ、ゆうたん。唐突にウィラポンへの思いを語り始めた後、大江さんへの感謝の意を表明。バンコク旅行・秘密特訓と二人の絆も深まり、めでたしめでたし。この試合はゆうたんの横綱相撲だった。メインは良かったよ。果たして、これがメインかはどうかは全く分からないけど。
次の日、伊原道場で猛練習をする永田裕志の姿が。「強さ」とは何か?それを追い求める男の姿が確かにそこにあった。 
その後、本隊を離脱宣言。4月15日、サムライTV無差別級タッグトーナメントでは後藤洋選手と組み見事優勝。NEW JAPAN CUPの一回戦では、棚橋選手に対して見事反則負け。強さを追い求めて臥薪嘗胆する永田裕志。彼の旅は、まだ始まったばかりなのだ。