この前のノア

プロレスといえば、ノア。
ノアだけはガチ、を本気で信じている友人(精神疾病絶賛治療中)がいて、プロレスの仕組みをどう説明していいのかに困る。10年ぐらいの付き合いになるが、まさか自分の身近にまるっきり全てを信じている人間がいるとは想定していなかった。そいつもネットをやっているし、既に知っているもんだと思って、ある話をしていたら、「え」とそいつが固まってしまった。ちょっと聞くと、「他はそうかもしれないが、ノアだけは違う」と、そいつが言うんだ。予想外の答えに、自分も固まってしまった。「小橋が一番強いよ」と、念を押すように言う友人の声に、私は何も言えなくなった。自分とは関係ない時の流れの存在、を感じた一瞬であった。
何も知らないことが一番いいのかもしれない、とそいつを見て、考えが変わってきた。仕組みを全部知ったからといって、プロレスを見て楽しめるようになったかというと、そうでもなくなった。ここ最近だと、リングの"政治"とやらが見え隠れしてしまい(単に自分の勘違いの場合もあるが)、すんなりと楽しめなくなった。全てをわかりきった上で楽しむ、という行為は難しくなってきている。
ところが、実際、生で選手を見るとやっぱり面白いなという面もあって、自分のプロレスインポはテレビや情報からくるものであり、会場の生だと立つという、どうにもこうにも間違った感じではある。長年付き合った、腐れ縁の幼馴染だ。あの時の思い出話を止めて建設的な未来を語ろうかと考えながら、ノアを見ていたら、いつの間にか終わっていた。