感想:名探偵のたちのユートピア(著:石上三登志)

 探偵が華やかな時代があった。今の感覚では盗聴や浮気調査などどこか蔑まれて、矮小化されたイメージになってしまった。謎を解き、この世の位相までも見通す超人を描く小説がかつて賑わっていた。現在では、古典というものが生まれづらくなっているようだ。ドイル、アガサ、ハメット等が情熱を注いで書いてきた探偵小説を丁寧に解き明かす。探偵小説に詳しくない私にも、分かり易かった。
 時代背景、内容、トリック、構成、作家達の相互作用、を細かく解説していく。
 探偵小説は謎解きだけ、という認識しかなかった自分に、これとこれが繋がっていて、作用して出来上がった小説、という事を認識させてくれた本だった。
 地球のための紳士録も、相互作用について書かれた本だった。どこかやさしい視点で書かれていて、作者のジャンルへの愛情が感じられる本。