代々木

4人の強敵と別れ、代々木へ向かった。どうしても、今見とかなければならない物件があったからだ。それは、代々木会館。『傷だらけの天使』の主人公が住んだペントハウスのある建物。ファンなら一度見なければと思い、駅から降りてかの地へ歩く。駅から徒歩2分。意外すぎるところに、それはあった。ひしゃげた窓。黒ずんだ外装。よれたサッシ。使われなくなった看板。移転の張り紙。主のいないテナント。明かりの無いビル。それでも俺は、感動のあまりしばらく動けなかった。何回も見たドラマの舞台がまだ現存し、この眼で認識することが出来たからだ。外観を眺めてから、明かりの無い階段へ入った。むっとする匂いが、俺の鼻を刺激した。かび臭かった。二階に上がろうかと思ったが、あまりの匂いに諦めた。階段の入り口で、久々に買ったハイライトを吸った。取り壊される、この建物。棄景。形あるもの全て滅ぶ。風の前の塵に同じ。エントロピーショーケンの着てた皮ジャン。たまらん節。『俺達にやれって言うのかよう』『健太って言うんだ』ぐるぐる、色んな言葉や名シーンが回って円を描いた。ニコチンのせいなのか、時によって醸成された建物の雰囲気のせいなのかは分からないが、頭がクラクラした。代々木会館を後にして、帰路に就く。