all farewells should be sudden

村上春樹訳『ロンググッドバイ』読了。清水俊二氏の訳本も素晴らしいのだけども、いささか古臭い言い回しがあって、読んでて多少冷める部分もあった。この本は、新訳したおかげで読みやすくなった部分はあると思う。古典の訳書をいつまでも古臭いままでいるのもどうかな、と感じる事があり、このような企画は歓迎。
多少比較してみる。
清水氏訳

ギムレットにはまだ早すぎるね」

村上氏訳

ギムレットを飲むには少し早すぎるね」

清水氏のシャープな文体も捨てがたいのだが、この登場人物の性格を考えると、村上氏訳の方が的確ではないかと思うなぁ。

清水氏訳

ほんとのさよならは悲しくて、さびしくて、切実なひびきを持っているはずだからね

村上氏訳

それは哀しく、孤独で、さきのないさよならだった

清水氏訳はマーロウの心情吐露シーンを感動的に仕上げてるのだけども、村上氏はここでハードボイルド的にまとめてる。この場面は、清水氏訳の方が好きだ。

このように色々な違いはあるものの、どちらも面白い本であるのは間違いない。